今回は海外から日本へのインバウントを増やす活動を行っているJNTO(日本政府観光局)シドニー事務所の巽麻里子所長にインタビューしました。
※インバウンド→外国人が訪れてくる旅行のこと。今回の場合は訪日旅行のことを指します。
聞き手:Ryota Nakatani, Hiroyuki Ishizuka
JNTOの活動内容について教えて下さい。
JNTOでは、より多くの外国人の方々に日本へ観光目的で来ていただけるよう、マーケティング活動、PR活動を行っています。現在、JNTOは海外に14箇所の拠点があり、シドニー事務所ではオーストラリアとニュージーランドを管轄しています。
ニュージーランドはラグビーが人気で、2019年には日本でラグビーのワールドカップが開催されるので、もうすでに問い合わせが来ていますね。
オーストラリアでもラグビーは人気ですよね。
はい、ただ、オーストラリアに関しては、問い合わせはまだそれほど多くは来ていないですね。オーストラリアにはいろいろな種類のラグビーがあるので、もう少し時期が近くなれば興味を示してくれる方が多くなるのではないかと思います。
JNTOでは過去「祭り」に対してどのような取り組みを行っていますか?
Matsuri in Sydneyでは近年CLAIR(自治体国際化協会)さんと隣接する形で出展を行って、来場される海外のお客様に、日本を紹介するパンフレットをお配りして、観光案内をおこなっています。
「祭り」にいらっしゃる方々は日本文化に興味がある方が多く、中には具体的に日本のどこに観光に行ったら良いのかアドバイスを求められる方もいらっしゃいますので、魅力ある観光場所などをお知らせしています。
どういったことに興味を持たれているのですか?
多いのは桜ですね。オーストラリアは日本と季節が逆なので、いつ、どこに行ったら見られるのかという問合せは多いですね。パッと見て日本だと分かる桜や富士山や舞妓さんなどは、とても人気がありますね。
では、忍者や侍も人気なのですか?
人気ですね。「今でも侍はいるのか?」って聞かれる方もいらっしゃいますね(笑)それと、オーストラリアの方は体験ものが好きなので、忍者体験とか京都に行って着物を着るコンテンツはとても人気ですね。自然も好きでソフトアドベンチャーといったハイキングやサイクリングのような誰でもできるアクティビティは人気ですよ。
今年のシドニーの「祭り」に対する取り組みを教えてください。
一般消費者に情報提供できる良い機会ですので、今年も出展を行う予定です。近年、Matsuri in Sydneyには、観光関連企業や自治体が参加することが増えてきました。日本の観光を様々な角度からPRしていければ良いですね。
「祭り」に参加される企業等が増えたのには理由があるのですか?
近年、オーストラリアのマーケットに対する関心が高まってきているからです。何故かと言いますと、オーストラリアの方々は旅行予算が多く、観光地での滞在期間も比較的長期間のため、観光業界として非常に優良顧客だからです。
オーストラリアのマーケットに対する関心は高まってきてはいますが、観光魅力をオーストラリアの方々にPRできる場所はあまりありません。Matsuri in Sydneyは日本の観光をPRできる貴重な場でもあります。
日本ブランドを、祭りを通じてオーストラリア人にどのように発信しようとお考えですか?
私たちのミッションは、海外の方が「日本に行く」というアクションを起こして頂くことになります。Matsuri in Sydneyには日本を感じることができる様々な企業・団体が出店しています。日本ブランドの魅力というのは一つではなく、食や文化、ホスピタリティなど様々ですので、お祭りに来てくれる方々に一部でも日本の魅力を感じてもらって、日本に行きたいと思ってもらえるようPRしていきたいと思います。
日本を訪れるオーストラリアのスキーヤーが過去最高と聞いていますが、日本国内のスキー人気都市はどこですか?
ニセコ(北海道)や白馬(長野)が人気ですね。それらのスキーリゾートはオーストラリア人観光客向けのPR活動に永らく取り組んできました。あとは雪質が良いことなどが口コミで広がったことが大きいのではないでしょうか。
スキーが広まったのはどういったPRがあったのですか
もともとオーストラリアではスキー観光地としてスイスやアメリカ、カナダが人気だったようです。ニセコ、白馬などは10年以上前から知られていたようですが、特に観光地として定着したのは東日本大震災後の観光集客のリカバリーによるPRが功を奏したといえますね。
日本のスキー観光地はパウダースノーで雪質が良いことが人気の理由ですが、ほかにも食が充実していること、温泉があるといったことも人気の理由です。
それでは夏の日本をどのように訴えようとお考えですか?
現在の課題であると言えますね。スキーシーズンや桜見のシーズンを過ぎると集客が落ち込みます。日本の夏は暑い上に湿度も高いので海外の方に来て頂くには少し厳しいですね。ただ、集客は伸びているんですよ。その理由の一つとしては富士山に登れるシーズンでありますし、高原リゾートでハイキングなど自然を楽しんで頂けます。あとは夏祭りが多くありますし、この時期だけのコンテンツを使ってPRしています。
日本の花火は夏の観光の目玉にできそうじゃないですか?
花火が夏の風物詩であるという感覚は海外の方にはないので、花火だけだと難しいでしょうね。ただ、花火も観られるお祭りは良いのではないでしょうか。
オーストラリア人に人気の日本の祭りはどこですか?
具体的にどの祭りが人気かというよりも、どの都市で行われているかに左右されていますね。観光地としても人気の京都の祭りなどには海外の方もよく見に来られていますよ。
特定の祭りを海外にPRしていくためには、受け入れ体制を整える必要がありますね。現状では日本の祭りを取材することは外国人のメディアにとってハードルが高いですね。海外メディア向けに席を押さえるとかそういった活動をする必要があると思います。また、英語でのWebサイトの充実や外国人が参加できるツアーの充実を図るといったことも大切ではないでしょうか。
記事を読んで下さる読者のためにクールジャパンとは何かを説明して頂けますか?
日本文化の発信方法の一つですね。アニメやコスプレだけではなく伝統文化も含めて打ち出していくものだと考えます。
日本政府がクールジャパンを打ち出すことで、実際に日本へのインバウンドにつなげるための方針は?
我々には、日本に来て頂く方にいくつかのターゲットがあります。そのうちの一つが「富裕層」です。オーストラリアは物価が高く、資源もあることから富裕層が一定数存在します。そういった層には、洗練されている日本の文化が心にささるのではないかと考えます。
例えば女性向け高級ファッション誌「Vogue」とのコラボレーションで日本の観光地をPRして富裕層向けに日本観光の認知活動を行っています。やっぱり、旅行で行き先を決めるのは女性じゃないですか(笑)
そうですね(笑)(男性一同)男性は従うだけですからね。あとは、お金を出して(笑)
資金的に余裕のある方も多く購読されているので、この女性誌はすごく重要な役割をすると思います。
ほかのターゲット層についてはどうですか?
今は30代、40代の家族層もメインターゲット層ですね。オーストラリアはどの国からも遠いので日本に来ることにそこまで抵抗がないので、家族でスキーや観光に来られる方もいます。ただし、今後は若年層にターゲットをシフトしていく予定です。
若手の層に対してはどういう施策を考えていますか?
若者向けにはソーシャルメディアを活用してPRしていきたいと思っています。オーストラリアのFacebookのユーザ数は1400万人くらいいるとも言われているので、外せないですね。また、2015年10月からはInstagramも始めました。最初のインスピレーションがとても大事で、画像の影響は大きいと思います。インフルエンサー等に協力してもらいビジュアルを強化しています。
インスタグラムに載っている写真ってとてもキレイですよね。
政府としては東北に力を入れているので、インフルエンサーの方に東北の写真を撮ってきてもらいました。それがとてもキレイな写真で、こんなところが東北にあったんだ!ってビックリしました。
良いところがあれば、地方でも行ってみたいと思いますよね
そうなんですよ。屋久島とか秘境といわれる温泉なども良いですね。いまオーストラリアでは、現代アートが見られる直島も人気ですね。スキーの前か後に一般観光として行かれる方が増えていますね。冬場はお正月を除くと閑散期なので日本の観光地としても良いみたいです。
オーストラリアの方は2、3週間ほど長期で滞在される方が多いので、主要な観光地だけでなくオフ・ザ・ビートゥントラックと呼ばれるあまり観光地として知られていない場所にもよく行かれます。
この前、白川郷にいったときも観光客のほとんどが海外の方でした。
結構いろいろなところに行かれるのですよね。特に、北陸新幹線ができてから観光ルートが広がっているんですよ。
これからのプロモーション次第で人は呼びこめるのですね。
そうですね。また、今は一般の方がYouTubeで綺麗な映像を作成しているので、それがきっかけで足を運ぶ方もいらっしゃいます。そういうところは日本をPRする上で活用していきたいですね。
漫画やアニメの影響でコスプレ等が流行っていますが、そういう層に対してどんな対応をお考えですか?
オーストラリアではSMASH!※が開催されていますのでそのイベントを活用しています。そういう文化が好きで日本にいらっしゃる方は結構いますね。漫画やアニメ、コスプレ等に関心のある方々の情報収集源は主にSNSなどです。彼らは興味あることは自分達で調べ上げているので、JNTOとしては観光時の補助となるような情報の提供をするといった対応を行っています。また、彼らの親御世代にも日本をPRして興味を持っていただけるよう取り組んでいます。
※SMASH! → オーストラリアにて開催されるアニメ、漫画、コスプレ等のサブカルチャーの祭典。
巽所長にとって「祭り」とは何ですか?一言でお願いします。
お祭りは日本の伝統文化だと思います。
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お祭りは、重要な日本の観光をPRできる場としてこれからも日本の良さをオーストラリアの人々に届けたいと思います。巽所長、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました!
祭りウェブ 編集チーム
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